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②妊娠前からはじめる健康なからだづくりのための食事ついて

お母さんの健康と、赤ちゃんの健やかな発育には、妊娠前からのからだづくりが大切です。若い世代の「やせ」が多いことなどの課題から、10項目の食生活指針が示されています。

日頃から自身の健康を意識するきっかけにしましょう。

妊娠前から、バランスのよい食事をしっかりとりましょう

妊娠は食事を見直す絶好の機会と言われますが、実際には妊娠を機に大きく変化するものではなく、妊娠前の食行動が継続される可能性があります。そのため、妊娠前から栄養のバランスに配慮した食生活を意識して実践していきましょう。

不規則な食事や食事の回数が少ないと栄養が偏り、からだの免疫低下や生活習慣病につながります。健康のためにバランスのとれた食事が大切です。

バランスの良い食事とは、1食でご飯やパン、麺類などのエネルギー源となる「主食」とたんぱく質を多く含み血液や筋肉を作る肉や魚、大豆製品等の「主菜」、野菜やきのこ類などからだの調子を整えるビタミンやミネラルを含む「副菜」が揃っていることです。

料理が大変な時は、外食や中食をうまく取り入れましょう。

「主食」を中心に、エネルギーをしっかりと

ご飯やパン、麺類などは炭水化物を多く含んでおり、体内に吸収されるとブドウ糖に変わります。ブドウ糖は脳がエネルギー源として利用できる唯一の栄養素で、不足するとからだのだるさや集中力の低下につながります。

妊娠中には、適正な栄養状態を維持して、正常な分娩をするためには、妊娠前に比べて妊娠初期は+50kcal、妊娠中期は+250kcal、妊娠末期は+450kcal余分にエネルギーが必要です。また、授乳婦も+350kcal余分にエネルギーをとる必要があります。しかし、現状は十分にエネルギーをとれていない状況にあり、20歳から49歳の女性では主食であるご飯やパン、麺類などの摂取量が減少しています。

一度に十分な量の主食をとることが難しいときや3回の食事で十分に主食をとれないときは、間食でおにぎりを食べるなど、主食からエネルギーをしっかりとりましょう。

不足しがちなビタミン・ミネラルは、「副菜」でたっぷりと

野菜や海藻類、きのこなどを中心とした料理を「副菜」といい、ビタミンやミネラル、食物繊維を豊富に含んでいて、主にからだの調子を整える働きがあります。野菜は種類によって含まれる栄養素が異なるので、複数の種類を上手に組み合わせることが大切です。

しかし、妊娠中や授乳中の女性は、ビタミンやミネラルが十分にとれていないとの報告があります。摂取量が不足しがちなビタミン・ミネラルとしては、葉酸と鉄があげられます。葉酸は、胎児の先天異常である神経管閉鎖障害の予防のため、妊娠前から十分に摂取していることが大切です。また、鉄は妊娠により需要が増加するので、妊娠前よりさらに多くの鉄摂取が必要です。

「主菜」を組み合わせてたんぱく質を十分に

たんぱく質は、からだを構成するために必要不可欠な栄養素です。「主菜」は魚や肉、卵、大豆製品などを使ったおかずの料理で、たんぱく質や脂質を多く含んでいます。

例えば、青魚にはDHAやEPAも豊富に含まれ、牛肉や豚肉には鉄も多く含まれ、大豆製品には食物繊維も豊富に含まれるなど、食材によって含まれる栄養素が違います。そのため、特定の食材に偏らず、多様な主菜を組み合わせて、たんぱく質を十分とるようにしましょう。

【妊娠中に気につけたい食品】

食品の中には、注意が必要な食品があります。レバーなどには、ビタミンAが多く含まれていますが、ビタミンAは過剰摂取により先天奇形が増加することが報告されているため、妊娠を計画する人や妊娠3か月以内の人は大量の摂取を避けましょう。

また、一部の大型の魚介類には水銀の量が比較的多いものも見受けられるため、おなかの赤ちゃんに影響を与える可能性が指摘されています。食べる魚介類の種類と量に注意が必要です。

肉・魚のパテ、生ハム、スモークサーモンやナチュラルチーズなど加熱していない食品(食前に加熱しない調理済み食品を含む)は、食中毒菌のリステリア菌が増殖している可能性があり、妊娠中は感染しやすく、赤ちゃんに影響が出ることがあります。普段から食品を十分に加熱しましょう。

乳製品、緑黄色野菜、豆類、小魚などでカルシウムを十分に

カルシウムはからだの機能維持や調節、赤ちゃんの骨や歯をつくるなど重要な役割があり、妊娠や授乳により母体からカルシウムが失われます。

15歳から49歳のカルシウムの一日量(推奨量)は650㎎で、若いうちからしっかりとることで、将来の骨粗しょう症予防になります。しかし、カルシウムの摂取量は平均的に少なく、よい供給源である乳製品は、学校給食のなくなる15歳以降急激に減ってしまいます。

カルシウムは、牛乳やチーズなどの乳製品、小魚に多く含まれています。また、カルシウムの吸収をサポートするビタミンDも合わせてとると良いでしょう。

妊娠中の体重増加は、お母さんと赤ちゃんにとって望ましい量に

妊娠中の体重増加が不足すると、早産のリスクや低体重児のリスクが高まり、逆に体重増加が多すぎると巨大児のリスクが高まります。妊娠中の体重増加量の目安は、お母さんの妊娠前の体格が影響します。妊娠前が低体重(やせ)の場合は、胎児発育に与える影響が大きいと報告されています。

母乳育児も、バランスのよい食生活のなかで

授乳中はエネルギーやたんぱく質、ビタミン等の多くの栄養素を妊娠前よりも多くとることが推奨されていますが実際の摂取量は少ない傾向にあります。バランスよく、しっかりと食事をとることが大切です。

無理なくからだを動かしましょう

身体活動・運動が、多くの生活習慣病の予防・改善や健康維持に効果があることは知られており、座り続ける等の身体活動が少ないことで健康障害が引き起こされることも分かってきています。しかし、現在、1日の歩数が5,000歩未満の女性の割合は、特に20歳代から50歳代において顕著で、運動習慣者の割合も減少しています。

極端に運動不足であることや運動をやりすぎることは、妊娠や出産に悪影響を及ぼす可能性もあり、自身の体調に合わせて、無理なくからだを動かすことが大切です。

たばことお酒の害から赤ちゃんを守りましょう

喫煙は不妊や早産・発育障害につながります。受動喫煙も母子ともに健康に悪影響を及ぼします。

また、妊娠中は少量の飲酒でも胎児の低体重や脳の障害を引き起こす可能性があり、授乳中もアルコールが母乳に移行し、乳児の発育にも影響します。

お母さんだけでなく、その周囲の人も禁煙・禁酒に協力することが大切です。

お母さんと赤ちゃんのからだと心のゆとりは、周囲のあたたかいサポートで

妊娠期・授乳期は、からだの急激な変化と共に毎日の生活のリズムも短期間で劇的に変化し、身体的にも精神的にも不安定になりがちです。また、多くの妊産婦が子どもを産み育てることに困難を感じており、妊娠中は約10%、産後は10〜15%にうつ病がみられるとの報告もあります。

出産や育児に不安や負担を感じたときには、ひとりで悩まず、保健師や助産師などの専門職に相談することが大切です。当院の「こども相談外来」もご利用ください。